押忍。とりあえずこれを読んでくれ。
NHKが「イスラム国」の呼称変更 メディアごとに呼び方違い、混乱招きかねない
http://www.j-cast.com/2015/02/14227863.html
NHKが先週あたりから「イスラム国」という名称を避け、「過激派組織IS」という呼び方を使い始めた。イスラミックステートとカタカナで呼ぶことも。首相とか政治家関係はISILアイシルと呼ぶし、ほかのテレビ局では「イスラム国」をそのまま使っていることが多いようだがこれもいつまで続くかは??だ。
ネットの世界ではもっと混沌としていてISISアイシスと呼ぶ人もいればISアイエスと呼ぶ人もいるし、「イスラム国」って普通に呼ぶ人もいれば、首相のまねしてISILアイシルって呼ぶ人もいる。ISIだったりもする。全部同じ総体を表す言葉としてはバリエーションが豊富すぎねえか??いくらなんでも複雑すぎだ。各テレビ局にゲストで呼ばれる評論家の皆さんも局によって「あの組織」の呼び方を変えるのだろうか?視聴者はさっぱりである。おれみたいな国際政治マニアならそりゃ別に混乱しないけど、全然興味ないその辺の女子高生とかにこの辺の事情をわかってくださいと頼んだところで「イスラムこわ~いキモ~い」と言われてしまうだろう(嘘)。
興味がない人ほど宣伝の影響を受ける。
これはワタクシが昔書いたプロパガンダの解説文だが、興味がある人はどうぞ。
http://wolf.adolf45d.com/propaganda.html
政治宣伝の影響を受けるのはワタクシのような国際政治マニアではなくて、政治なんかに全く興味のないその辺のせんべいバリバリ食いながら見てる主婦とかそういう人たちである。みるでもなくみている。聴くでもなく聴いている。全然内容に興味はない。ただテレビをつけているだけ。こういった人々である。彼らが偏見を増幅する装置となる。
「イスラム国」という名称がイスラム教徒すべてをブルータルにみせてしまう。国であるかのような印象を与える。確かにもっともである。イスラム教徒のほとんどは穏健であるし、奴らはクニではない。その意見は理解できる。
そういえば、ワタクシもこの2週間ぐらいでイスラム国とかその辺の本を片っ端から読んだのだけど、その中でも一番読みやすくて網羅的だったのがこれだ。
これはイタリアの学者さんが書いた本で訳文もなかなか良いでき。この本の冒頭にまさしく今の日本の混乱についておあつらえ向きな文章が書いてある。まとめてみよう。
・”この組織は”頻繁に呼び名を変えている。
・ザルカウィが設立したころは「タウヒードとジハード集団(al Tawhid wal jihad)」
・のちに「イラク・イスラム国(ISI)」。
・その後は「イラクのアルカイダ(AQI)」に吸収され、
・2010年にバグダディが総帥になってからは「イラク・イスラム国(ISI)」にまた戻り、
・アルカイダ系の「ヌスラ戦線(Jabhat al Nusra)」の一部と合体し、
・「イラク・レバントのイスラム国(Islamic State of Iraq and the Levant)」に改称。
↑の名称はISISと呼んだりISILと呼ばれるわけだ。
・2014年6月にカリフ制国家の旗揚げを宣言したとき「イスラム国(IS)」に改称したのである。
・で、今に至る。
・イラクとシリアでは組織の発足当初から単に「アッダウラ(国家)」と呼ばれているそうだ。
じゃあ欧米は”この組織”をどう呼んでるのだろうか?上記本によれば(状況は日々変化しているし、ここに書かれている情報が古い可能性を先に申し述べておきたい)、、、、
・ホワイトハウスとイギリス首相官邸はISILを使う。(安倍ちゃんはここに足並みを揃えただけだろう。工夫のない男である。)
・アメリカのテレビ局PBSは「イスラム国(IS)」を使う。
・オーストラリアの一部メディアは「イスラム国集団」。
・総じて英語ではISよりもISISやISILの方がゴロが良いので好まれるらしい。
・各国首脳部やメディアはやはり”この組織”を国と認めたくないがゆえにいろいろと工夫しているようである。
で、混乱が増している。というわけだな、、日本とほぼ同じである。
いや、日本は欧米がこのカオスに陥っているのを先にみておきながら同じ迷路に迷い込んでしまった分間抜けであるといえる。特に安倍ちゃんがISILと呼び始めたのには閉口である。上記のようにISILは”この組織”の今の名前とは言えず、単にホワイトハウスを真似ただけだ。勉強不足な首相様である。
で、上記本が偉いのは「アタイはそれでもイスラム国という名称を使うわよ!」と断言していることだ。
え?え?だって国って思われちゃまずいょ。。イスラム教の人たちいじめられちゃうょ。。
彼女(著者は女性)はこう言う。
”しかし本書では「イスラム国」という名称を統一して使う。これがこの集団が新しく採用した名前であり、今後もこの名称で呼ばれる可能性が高いからだ。「イスラム国」のほうがISISやISILなどの略称よりも、はるかに現実的、実体的なメッセージを世界に発信すると感じる。すなわち、21世紀にカリフ制国家を再興するという決意のメッセージである。「イスラム国」の真の姿を隠すといった意図から漠然とした略称を使うのは、世界の人々が現実の脅威に直面する役に立つとは思えない。それどころか、中東に恒久的な平和をもたらす戦略を立てる上で邪魔になるだけだろう。”
骨のある女だ。よほど腰が据わっている。こういう臆せず主張する態度は素晴らしい。ヌルい日和見を排除した姿勢。皆がこうなら少なくとも混乱はしないだろう。
「かの組織」は経済的にもとっくにスポンサーの手を離れ、バグダディを首班とした疑似国家を作り上げている(その成り立ちはパレスチナ解放機構やイスラエル、旧ソ連の建国に酷似している)。独自のアーミーを持ち、警察を持ち、イスラム法を整備し、その広大な領域に住まう800万の”国民”から徴税し、”宣伝省”が外国から同志を募りある程度の効果を見せつけている。バグダディはムハンマドの後継者カリフを名乗り、思想に共鳴したものが全世界で散発的なテロを起こしている。
この総体をぼやかしてしまう略称の使用や、人によって呼び方が違うという状況が、我々の安全を守るとは思えない。呼び方が統一されれば様子を見てワタクシも倣いたいと思うが、それまでは「イスラム国」という名称を使う。