アンノウンソルジャー 英雄なき戦場

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地味度100
つまらん度100
眠い度100
総合得点45

これまでにも何度も映画化や映像化がされているフィンランドの古典的名作小説「無名戦士」を映画化し、同国史上最大のヒット作となった戦争映画。

こんなイントロダクションを用意されると、本気で期待してしまった映画だがこれははっきりスカでしたでごんす。なんという眠い映画だろうか。文化の違いすら感じた。


フィンランドの戦争映画といえば、「ウィンターウォー」しか俺は知らないんだけど、まあ本当によく似た映画です。暇で仕方ない人は見比べてみて欲しい。

「ウィンターウォー」はいわゆる冬戦争を描いた映画。モロトフ・リッベントロップ協定締結後にソ連軍が北欧とバルト三国を手中にせんと迫った時代の話だ。バルト三国は為すすべもなくソ連に主権を明け渡し、NKVDによって政府を破壊され、国家を解体された。民族的活動家は強制収容所に拘禁され、短期間のうちにほとんど全員裁判も受けられずに銃殺刑に処された。その後はナチスがやってきて再び国家は破壊され、ユダヤ人が根絶され、国が復興するのに数十年を要した。

シモ・ヘイへが化け物としての世界最高の虐殺スコアを弾き出した戦争としても有名だ。彼はたった一人で542人のソ連兵を射殺した。英雄なのか大量殺戮者なのか、現代の価値観で裁くことはできない。

フィンランドは迫り来る圧倒的なソ連軍に対し、死に物狂いの抵抗により主権を守り抜いた。敬意を払うべき歴史を持っている。映画化されるのはごく当然である。その他の国々がソ連邦に呑み込まれ、どのような憂き目にあったかを思えば当たり前すぎる。

ただし、「ウィンターウォー」は火薬は多いし戦闘シーンも多いんだが、どうにも胸踊るシークエンスに欠ける映画なんだが、今回のこれもそう。本作は冬戦争で失われたカレリア地方を取り戻すために始まった継続戦争、つまり独ソ戦の局地戦を描いているのだが、どんぱちはそれなりにあるが実に眠い映画。戦闘にリアリティがなく、目新しさも皆無。

敵陣のソ連の描写が全くないのも減点である。というかソ連兵がとても弱い。ソ連兵は手榴弾投げてこないのにフィンランド兵は手榴弾や機関銃でやりたい放題。苦労してるように見えない。

また、ドイツの同盟軍として戦ったフィンランド軍は、数千マイルに渡る東部戦線の前線のごくごく一部、超狭い範囲の局地戦を戦ったに過ぎない。ドイツ軍との連携の描写が一切ないのはおかしい。空軍の支援や砲撃支援があったはずだが全く描写はなし。ドイツに頼ってた姿を描けないのは時代を想えば理解できるが、リアリティに欠ける一因となった。

また、どんぱちは激しいが、どうにも綺麗な戦争を描いているように思えてならんのです。これは愛国映画に多いんだが、結局これは悲惨な戦争を戦い抜いた祖先に敬意を払う映画なのであって、反戦映画ではない訳です。

戦争の悲惨さとか、ナチスに加担した反省とかは描きたくないんですな。そういうわけでドイツ軍が全然出てこない。フィンランドが単独で巨大なソ連邦と戦ってるかのような、そんな錯覚すら覚えるほどだ。事情はわかるが、何か奇妙な印象を覚える映画だ。

これはエストニアの同じく愛国映画である、「1944 独ソ・エストニア戦線」のほうが一枚も二枚も上手だ。ドイツに武装親衛隊の傭兵として雇われた者、ソ連側でNKVDに加担せねばならなくなった者、どちらも描き、同じ国土で同じ民族が殺しあう姿を哀愁たっぷりに描いているのだ。エストニアの悲惨な歴史に涙しつつ、恐ろしい戦闘の描写に身悶えできる傑作である。

本作は主人公に魅力がなく、例によって何人かの視点で物語が進むためまとまりに欠け、たっぷり風呂敷を広げた割にはあっさり死んだりだとか。見せ方が上手くない。文化の違いだろうか?

待機シーンと戦闘シーンの繰り返しで、戦争を描いた割に起伏に欠けるストーリー展開もよろしくない。

最後に1つ与太話を。
「イワンの戦争」という本がある。
ここで大祖国戦争を生き抜いたソ連の婆さんがインタビューされて、「ドイツ兵はみんな寒がりで猫みたいにおっかながってた。でもフィンランド兵は最悪だっただよお嬢さん!」なんて言葉があったと記憶している。

フィンランド兵が、無茶苦茶獰猛で残虐で血も涙もない戦闘民族としてソ連民間人に記憶されていることは知る人ぞ知る史実である。冬戦争の戦いぶりも普通ではない。彼我の戦力差は四倍以上あったんだが、守り切ってしまった。たった4ヶ月弱の間にソ連兵の戦死傷者数は40万人に迫った。

戦闘民族フィンランド人を是非是非見たかったんだが、それは現代のフィンランド人にとっては知りたくもない事実、忘れたい過去なのだろう。

実際寡兵で戦い続け、結果的にはカレリア地方を取り戻せなかったものの、見事な手腕で戦争を終わらせたフィンランド軍、政府首脳の戦上手は後世まで語られるべきである。

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