漫画ルポ「中年童貞」

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かる〜〜い気持ちで「ピッコマ」で読んでみた漫画だが一気にハマってKindleで購入し、読んでしまった…これはえげつない。

ギャグ漫画なんだが、いわゆる「中年童貞」なるカテゴリーを一つの棄民問題として捉える内容だ。これは僕のブログでもちょっとそういう要素はあって、たくさんの中年童貞の方々から嫌がらせや罵倒を浴びたりもした。もはや社会全体でこの問題を考えるべきだという機運も高まっている。何しろこの漫画でルポルタージュされてる人物は全て強烈極まりないが、「ああ、いるよな。たしかに」と思える人々ばかり。確かにいる。確かにいて、さまざまな人に迷惑をかけている。

ひとり目は44歳パラサイトシングルの介護職員。中卒でまともに字も書けず、母親に溺愛されて育ち、ショボい倉庫整理の仕事をしていたがクビになり、ヘルパー2級を取っていきなり介護業界に飛び込んだ。ヘルパー2級はハロワで真っ先に取得をすすめられるぐらい国が大々的に大安売りしている資格だ。講習を受ければ誰でも取れる。

私は介護老人保健施設、介護老人福祉施設で七年間勤務し、認知症高齢者の施設での生活を組み立てる仕事をしていた。介護福祉士は常に身近にいて、仕事の相談をしたりされたりするのが常であった。

だからわかる。確かにこういう人はいる。

50代にしてこの仕事が初めてという者、
ついこないだまで引き込もっていた、或いはニート、
元風俗嬢、元キャバ嬢、
元トラックの運ちゃん、自称元カメラマン、自称元営業マン、元ヤンキー、前科者…
いろいろだ。いまやインドネシア人やタイ人、ベトナム人がどんどん増えており、このほど女性受刑者の受け入れ先としても確立しつつあるという。混沌というしかない。

もともと第一線で働いていた主婦が子育てとともに始めるケースも多い。(といっても彼女たちはかなりまとも)事情は様々だがまともな社会から弾かれてしまった、でも色々な事情で金が要る……そんな人物が流れ着く場所となっている。恋愛模様も不倫ばかりで凄まじかった。

ふつうに高校を出て専門学校を卒業して介護福祉士になる者もいるが、そのような介護エリートは年々数を減らしている。そもそも若かりし頃から目指す仕事ではないように思うわけで、十代にして介護系の専門学校を受験する者もやはりどこかまともではない…

利用者も家族に見捨てられた孤独な老人が多数を占める。介護施設は日本において人間が最後に辿り着く場所となっているのだ。

中年童貞の第1の特徴として、コミュ障が挙げられる。人の目を見て話せない、声が小さい、何も喋らない、世間話にも応じられない、まともに挨拶もできない、プライドが高く自分のことばかり話す、人の話に興味を持てない、すぐ怒りすぐいじける、他人との距離の測り方がどこか間違っている……などなど

そしてこれも第2の特徴として皆に言えることだが、見た目が大変悪い。不潔な身なり、管理されていない体重、ハゲ、笑顔が作れない、ふてくされ顔…などなど。

この漫画で描かれる人物はいずれも強烈。
読んだ後に気づいて納得したんだが、原作者は「名前のない女たち」シリーズの中村敦彦氏だ。中村氏はもともとエロライターの仕事をしていたが出版不況で失業し、一時期介護施設の経営をしていた。そこで見た魑魅魍魎の如き社会不適合者が第1話で描かれる坂口(仮名)。その他、LGBTの中年童貞や特殊AV男優の中年童貞、アキバ系の中年童貞、ネトウヨの中年童貞など、もはや社会の縮図、この国の棄民問題を網羅するかのような筆舌に尽くしがたいこの世の地獄が語られる。凄まじすぎる。

絵は風俗ルポ漫画で有名な桜壱バーゲン氏。恐ろしいほどに特徴を押さえた漫画でこの地獄を活写している。言葉もない。

共感が持てるのが、坂口氏の語りは大上段に構えた学術的な内容ではなく、あくまでいちルポライターとしての個人目線に基づくものということ。率直なのである。あまり批判を恐れてる様子はなく、わかりやすくストレートな表現。人権とかそういうものに配慮してる感じは全くない。だからこそわかりやすく面白く、共感を集めるのだ。

ワタクシはいち医療従事者として、この漫画で描かれる人々はふつうに精神病か、何らかの発達障害であろうと思う。知り合いにこの漫画に出てきてもおかしくないような、よく似た中年童貞の介護福祉士がいる。笑い飛ばして良いとは思わないが、精神病だから仕方ない、発達障害で知能も低いししょーがない、というのはどこまでいってもこれこそが差別そのものだと思う。

LGBTも同じ。同性愛者を生物学的に生態学的に自分たちとは異なる存在なのだから、権利を認めよう、という思想は、これこそが強烈なナチズムである。何故なら異物を受け入れるか排除するかは思想ではなく、自分たちの懐のゆとり具合で恣意的に決められているからだ。権利を認めよう、物分かりの良いフリをしようってのは思想ではなく、単なるエゴで、異物と認識することそれ自体は気狂いの国家社会主義者と何ら変わりはない。

この漫画で描かれるLGBT中年童貞のエピソードは根が深く、必読だ。何でこうなってしまうのかさっぱりわからない。狂気というしかないが、簡単にLGBTだからしょーがないべと線を引ける問題ではないとバカでもわかるだろう。お利口な人権屋さんにこそ読んで頂きたい。その点この著者の漫画は、病気だLGBTだと安易に線引きせず、同じ人間として理解しようとしている。どこか温かい目線なのだ。

とはいえ、強烈な中年童貞の面々のどこかに、かつての自分を見るような思いがして心が揺さぶられるのも確かだ。俺とこいつらの差なんて紙一重だ……と戦々恐々とする。俺も若い頃はこうだった気がする。問題は精神的に成長せず、仕事を続けられないので金もなく、そのまま若い頃のスペックのまま醜く歳をとってしまったのが中年童貞という存在なのだ。男が若い頃に乗り越えねばならない試練の数々…それらにことごとく完敗した彼らの姿…自分もあの時試練に勝てなかったならば、似たようなことになっただろう…そう心から思えるので恐ろしく、一気に読んでしまうのだ。

その他、恐ろしく根の深い中年童貞問題を、マクロな視点で総括する後半部分も興味深く読める。

大学生の頃、「最強伝説黒沢」を読んで心が凍りついたものだが、あれより恐ろしい内容。

ある意味ホラーだが、男は読むべきだし、女性にも醜い現実をたまには覗いていってもらいたい。そして、どうかこういう男に情けをかけずそのまま金持ちのさわやかなイケメンとだけセックスをしていてほしい。

そして、中年童貞には物理的に距離を取り、どうにかかかわらないように生きて頂きたい。それが身の安全を守ることに繋がる。

男はこの漫画から、きっと敗者とは何かを読み取るだろう。反面教師としてこの地獄に堕ちないようゆめゆめ気をつけよう。もちろん自分にも言えること。自戒をこめて。

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