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これは関係ないかもしんないけどブラックメタラーは観て欲しい映画。17世紀イギリスの森でどん詰まりな生活を送る家族のお話。ちなみにけっこう病んでるので鑑賞要注意ではあります。時代考証、雰囲気作りや音楽などはとても良い感じで、映像も退廃美に満ちていて芸術的だ。


父親母親子供五人の貧乏一家はとある理由で教区を追い出され、森の真ん前のボロ家で隠遁生活をしている。色々テンパってて食べ物は少ないですし、子どもが多い割に男手は父親ただ一人。産まれたばかりの赤ちゃんもいるし、守るものが多い割に家族を守るセキュリティや保証は殆ど無いも同然な訳である。

こうなると生きるだけで大変なんだが、文化的な生活を保つ唯一の拠り所は「信仰」。キリスト教である。ひたすら聖書を暗唱し、何か困り事があれば聖書を開いて問題を解決しようとする。

家のそばの森の中には気持ちの悪い全裸のババアが住んでいて、一家の中でも一番小さな赤ちゃんが連れ去られてしまう。面倒見役だった長女のショックは計り知れない。母親は長女を責め立てる。親父は固いことばかり言うものの狩り一つまともにできないんで威厳なし。弟は長女の乳の谷間が気になって仕方ないし、何だかうまくいってない家庭だ…

だんだんと、仲間割れを始める家族。母と長女の不仲は決定的となり、ついには殺し合いにまで発展。その影では悪魔が笑っていた…という感じのストーリーだ。

ストーリーはこんななんだが、森で隠遁生活を送る家族の様子や、ファシズムじゃんと思えるほど強いキリスト教の影響力、教えに雁字搦めに縛られ、自滅して行く姿は圧巻だ。なんとなくベルイマンの「第七の封印」を思い出す展開だし、色の乏しい森に魔女が潜むというモチーフはもちろん「ブレアウィッチプロジェクト」を思わせる。森に悪魔が潜むとの思想はトリアーの「アンチ・クライスト」を引き合いに出すまでもなく、キリスト教の伝統的価値観。森は排斥されし異教の神々が潜む邪悪なスポット。「悪魔の教会」なのだ。

悪魔崇拝は自然崇拝(ペイガニズム)と同義で、「pagan」は今でも侮蔑語だ。八百万の神の国など、「悪魔の帝国」とほほ同義である。キリスト教徒たちはこのような「悪魔の帝国」を征服し、攻め滅ぼすことに命を賭けてきた。

長女役の女優はとても可愛い。儚げかつ危うげな色気。

また、この映画はキリスト教などあらゆる文化が「思春期の娘」を危険視した背景を炙り出す。長女役の娘の危うげな色気は必見で、母はこの長女がどんどん大人の女に変わって行く姿にハラハラし、同時に苦々しくも思う。

女の嫉妬心が悪魔を呼び覚まし、家庭を崩壊させるという展開は実に寓話的で、前近代的なお話だがその分、今時珍しいユニークなストーリーにも思えた。

この映画の特徴は、もとより家族が抱える普遍的な問題をみせ、悪魔の仕業なのか人間の業が産み落とした悲劇なのか、観客にはよくわからないようになっていること。とはいえ、最後には悪かったのは○○だとはっきり提示してくるのだが、心理サスペンスのように楽しむのも可能。

異教の弾圧は悪魔を倒す正義の事業だし、征服は常にレコンキスタである。女を迫害するのは魔女を討伐するための必要な犠牲である。こう書くと、キリスト教ってのは本当に怖い宗教ですね。。

まずまずお勧めです!

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