ハクソーリッジ 中国人向けの内容

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うーん。
総合得点は75点というところですかな。いくらおれがメルギブソン好きったって何でも無条件で褒めるわけじゃねえよ。おれは公平な男だ!差別はしない!
鳴り物入りで公開されたにしては、随分宣伝はあっさりめで何が何だかわからないテレビコマーシャルでした。ぱっと見てもタイトル読み上げてもこれが沖縄戦を描いた映画だとはわからないだろう。県民感情を優先させた結果のマーケティングなのかもしれないが、何とも中途半端である。40年前より先の大戦の記憶はより忌まわしく我が国の言論環境を覆っているような気さえする。県民感情県民感情ってそんな朝鮮人じゃあるまいにいつまでも気にしてる奴っているのか?沖縄は現実に我が国の共産党下部組織の巣窟になってやんややんやと政治運動をやっているわけである。彼らは声は大きいが大した規模ではない。そんなものに慮っていてばかりでは前には進めないと思うのだが如何でしょう?


こんなかんじの硬い冒頭を用意せねばならぬのはワタクシとしても不本意である。アンジーという名のたらこお化けの作った「不屈の男 アンブロークン」という童貞映画がついこないだあったと記憶しているが、「ハクソーリッジ」を観ていて真っ先に思い出すのはこの映画だ。よく似た構造を持つ映画だと言える。第二次大戦の英雄の幼少期から物語は始まり、恋人ができ、志願して入隊し、訓練され、戦場に赴く。何の変哲も無い普通のストーリー展開だ。野心の欠片もチャレンジ精神の泡沫さえ感じられない。で、日本人は適当に描かれる。水戸黄門みたいだ。

まあ、それはいいとして、一時間二十分ぐらいはたっぷり普通のアメリカ国内の人間ドラマ。変わってるのは主役のデズモンド氏が銃を持たない主義の良心的兵役拒否者であるということ。銃は持ちましぇん。人は殺しましぇん。神に従いましゅ。そういったポリシーを掲げつつ陸軍に志願するというわけのわからなさ。当然誰にも理解されず、上にも同僚にもいじめられる。いじめて除隊させようとしたり、精神病ということにして除隊させようと思ったり、挙げ句の果てには命令拒否ということにして軍法会議にかける。これが日本だったら当たり前に銃殺刑か座敷牢だろう。けれどもアメリカは憲法を遵守!きっちりデズモンドは上から認められて衛生兵として銃を握らないまま沖縄へ赴く。この辺までで一時間二十分ぐらいだ。あなたは耐えられるだろうか?まあ、僕は割と楽しんで観ましたがもう一回見たいかと言われたら「もういい」と答える。「二度は見なくていいよ」と。

さて、映画評論家が口を揃えて「プライベートライアン」並み!と太鼓判を押す後半チャプター。いよいよ前田高地の戦闘だ。戦車の進入できない崖の上の戦闘。攻めるは米歩兵第96師団。守るは第六二師団の兵力減耗した三個大隊を「独立」と銘打って適当に守らせただけの司令部壕だ。特別陣地が固いわけでも日本軍の精鋭が守っていたわけでも無い。しかし、96師団は戦力の40パーセントを喪失してわずか数日で連隊を第77師団と交代。デズモンドは第77師団のとある中隊に所属している。映画の戦闘シーンはここから始まる。

確かにすごい戦闘シーンなんだが、「プライベートライアン」並は言い過ぎである。「プライベートライアン」には及んでいない。それに戦争映画だって考えると尺が短いと思う。描かれている場面も戦争映画マニアを唸らせることは決してできないだろう。当時の戦術みたいなものはほとんど再現されていないし、まるでアクション映画みたいに現実味がない。爆発シーンは無闇に派手で、手榴弾が大爆発を起こすというもっとも初歩的ミスも確認できる。敵役の日本兵にしてもあまりにも描き方が雑なので、メルたんの日本観がよくわかった。

一番不満だったのは将校が登場しないことだ。日本側のね。軍刀持った、九八式でも三式軍衣でも構わないけど、将校がまったく登場しないこと(おれの注視する限り、ただの一人も登場しない)。日本軍は数や火力で圧倒的に勝る相手にそれこそ高度な知略を駆使して抵抗したわけでぞろぞろと人海戦術でアメリカ側を苦しめたわけではない。巧みな陣地構築や相互援助の体制、異常に高い統率力と忍耐力を駆使して米側を苦しめたのであり、将校が登場しないのは絶対におかしい。軍隊は命令で動くのであり、士官がいないならばゲリラと同じことしかできないものだ。戦闘中盤に日本側の反撃場面が挿入されていて(これは第三二聯隊の第二大隊をイメージしてると思われる←重要:後記)、これは日本側が得意とした浸透強襲戦術(いわゆる万歳突撃だ)で、映像的には迫力があるが、おれはそのときには「将校が一人もいねえなあ」と疑いの目を向けていたので、やはりというか何というか、がっかりした。この万歳突撃の場面でさえ将校は登場しない。浸透強襲は味方の火砲や機関銃の援護を受けながらも、銃を向ける敵陣地に肉弾で突っ込む戦術であり、もともとは第一次大戦時にドイツの将校が編み出した猟兵戦術なのだ。よくある勘違いだが、浸透強襲はただのヤケクソではない(←これは声を大にしたいと思う)。圧倒的な火力を持つ敵の懐に忍びこめさえすれば、敵は味方の頭上に砲を撃つのを躊躇い、あとは白兵戦術に勝る日本軍が勝利するだろう、という思考で、実際中国戦線では負けなしの戦術であった。ただし、敵の陣地に丸裸で突っ込むなんてのは人間離れした勇気と高い指揮・統制を必要としたので、抜刀した将校がいの一番に先頭に立って部隊を鼓舞する必要があった。嫌われていたら部下はついてこないし、背中を撃たれる可能性さえあった。それでも日本の下級将校は先頭に立って真っ先に死んでいったのだ。超人的な勇気である。あっぱれな愛国心だ。これを馬鹿にすることは絶対に許されない。しかし、この映画は将校は一人も登場しない。どう考えても不満しか感じない。火砲を背景に突っ込んでくる絵は作れていただけに、とても口惜しい。ただの怠慢に思えて仕方がない。軍刀抜いた将校が真っ先に突っ込んでくる映像は映画的にも美味しいはずなのに、なんでそれを怠ったかなあ、、、、これはスピルバーグの「ザ・パシフィック」のほうがまだしも再現されていた。アメリカが作った沖縄戦の最高傑作はあれということで問題ないと思う。これは多くのユーザーが感じたはずだ。

ちなみに、日本側からの前田高地の戦いの記録が残されていて、第三二聯隊第一大隊長、伊藤孝一大尉の従軍記である。前田高地の増援として反攻作戦に参加したのは第二大隊(ちなみに史実は夜襲である)で、伊藤大尉は前田高地での戦闘には直接関わっていないが、いかに日本軍が他の守備隊と連携を取りつつ高度な作戦を立て、粘り強く戦ったかがわかる。これを読まずにこの映画の日本軍だけみて「日本軍て弱いね」とか言ってる奴は死んだほうがいい。生きていても有害だ。さっさと死ね。

そんなわけで、これはデズモンド氏の視点で描いたアメリカ愛国映画の末席に連なるものであると断言する。卑怯な日本兵は降伏するふりで白旗掲げておいていきなり手榴弾投げてくるし(そして手榴弾はなかなか破裂しない)、部隊首脳部は罪人みたいに首吊り自殺している(爆笑)。司令官風のスキンヘッドのヒゲオヤジだけが小綺麗な軍服のまま腹斬って死ぬのだが、誰もが「いきなりなんだ、お前誰だよ!」と腹抱えて笑うだろう。ここは笑うシーンなのでぜひ大笑いしてもらいたいと思う。民間人が戦火に苦しむ場面も一切なし。民間人は後ろ姿一つ映らない!どんぱちだけやたら派手で、シューティングゲームかっ!と入れ歯がぶっ飛ぶ勢いで叫びたいと思う。沖縄県民は県民感情を今こそ爆発させてもらいたい。確かにこれはひどい。戦争を陳腐化しているのだ。

デズモンド氏は日本軍の地下壕で日本兵がウロウロする中、負傷した日本兵にモルヒネ打ったりどこまでも聖人なのだが、逆に言えば自分の陣地内で死にかかってる怪我人さえ放置する日本の軍隊の現実味のなさに気づけない人は、ちょっとどんな人でも頭がおかしいように思えます。崖まで追い詰めても縄切る知能すらない日本人の姿はおおいに中国の観客を喜ばせました。中国で大ヒットした抗日映画の亜種ともいえる。ひょっとして中国の客を意識してマーケティングしたんじゃないか?(だって日本より公開がずっと早かったしねえ、、、、)

評価してる奴はどうかしてるよほんと。戦争映画をまともに語れる映画ライター様はいないのかねえ。

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