フジワラくん

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4月もあっという間に中旬です。

僕は新しい職場で6連荘を終えたところです。今日一日休んだだけでまた明日から5連荘です。死にて~

前の職場を辞める時、気に入った人にだけ連絡先を教えて飲み行ったりしていましたが、今月は新しい職場で苦労するのが目に見えていたのですが、それでも残る人間関係もあるわけで、こうなると辞めた職場にも意味があったと思えます。悪い気はしませんね。人間関係がどんな形であれ続いて行くのは。

そんな中、同年代の男の子?で異常に手〇キ風俗を好む童顔の中年男性がいるのですが、これがまた不思議な男で、仕事中は無駄口を一切きかず、口は石のように固く、たまに喋ったかと思えば手〇キ風俗に行った話しか話題の引き出しがないという人間だ。

ワタシはなぜかこの男と妙にウマが合い、しょっちゅう曙町※付近で昼間から吞んでいたのだが、彼は飲むとそういうお店に行きたくなるらしく、それでいつも曙町付近の飲み屋をチョイスしてくるというわけなのだ。仮にフジワラくんとしよう。

※横浜のはずれにある歓楽街。朝鮮人と中国人とヤクザと障害者と老人ばかりの楽しい場所。

おれは最近ポリシーとして風俗には行かない、AVは観ないと決めたので、フジワラくんが「手〇キに行きたいっす」と言ったらそこんとこをわりとねちっこく説明し「行っておいで、おれはここで飲みながら待っているから」と促す。(自分のポリシーを人に強いるほどワタシは野暮ではないのだ)

フジワラくんは「うっす!すいません隊長、行ってきやす!」と走って30秒の行きつけのお店に鼻息荒く駆け込む。おれは行ったことないんでよく知らんのだが、その手?の店は時間にすればわずか20分で、金額にすれば5000円ぐらいで事を終えることができるのだという。曙町の相場を考えればこれは格安だ。短い時間だからそんなものなのだろうか? たかだが30分程度だ。おれはいつも『騎士団長殺し』の秋川まりえの叔母のような心境で文庫本を取り出して、ただ、待つ。

フジワラくんはスッキリした顔で戻って来る。そうしてワタシたちは再度アルコールを飲みなおす。

皆さんはたぶんフジワラくんが気持ち悪い非モテ男だと思ったと思うが事実は違う。フジワラくんはおれと同じ歳で、36歳。しかしさっきも書いたが童顔で、綺麗に髭を切りそろえ、髪型も短くファッションも爽やかなのでかなり若く見える。しかもおれが言うのも奇妙だが、この男はかなりのイケメンなのだ。バーに行けば隣に座った女が声をかけてきたりする。こないだはなじみの手〇キ嬢に「顔がいいから」との理由でライン交換し、いい仲になった。ただし、仕事はかなり適当らしく、それでも周囲からは「顔だけは良い」と言われている。そんな人間だ。

奥さんはモデルさんのような美人だ。家事はほとんどフジワラくんがやる。夜は料理しなければならないとかで、フジワラくんは必ず飲む時間として午前中を指定してくる。午前中からゆっくり飲める場所となると、これは選べるほど多くはない。夜の街が自然と選ばれる。夜のお仕事を終えた人々が朝食がてら酒を飲んで帰るのだ。夜の街は朝から飲める場所となる。

フジワラくんに子供はいない。フジワラくんは奥さんとのセックスが苦痛になっている。できれば奥さんには触れたくないし、近づくのも嫌なのだそうだ。それでも月に一度、奥さんの排卵日が近づくとフジワラくんは妻を抱く。内心ウンザリしながら。「ああもう勘弁してくれ」と思いながら、しかし、キッチリ義務を果たす。これは女からすればバッシングを受けるのだろうが、とんでもないことである。フジワラくんを責める女がいるとすれば、彼女は何一つ男のことを知らないと断言する。これは偉業なのだ。おれは密かにフジワラくんを尊敬している。

フジワラくんの奥さんはフジワラくんがいかにがんばっているのかよく理解している。奥さんはフジワラくんが好きでしょうがない。そして毎日キスを求めてくる。毎日毎日、朝昼晩と一日何回でも求めてくる。

フジワラくんはこの妻のキス攻撃も苦痛で仕方がない。ある日フジワラくんは妻にこう告げたのだ。「もう結婚して七年も経つし、いいんじゃない?もうそんなにチュってしなくても

「奥さん、泣いちゃって。取り乱しちゃって。すごく怒っちゃって」

フジワラくんは言葉少なに語ると、そこで黙り込んだ。この話題はここで切り上げたい。そういう意味なのだ。ワタシもそれ以上は何も尋ねない。何も言わなくてもわかるからだ。

しばらく黙って飲んでいた。居酒屋の店員が、お待たせしました~、と注文したことさえ忘れていた「チーズたこ焼き」を投げるように置いて行く。そのガチャンという皿の音が妙に大きな音で辺りに響いた。

「でも奥さん浮気してるんすよ。月に一、二回家に帰ってこない日があるんです」

フジワラくんはなんでもないようにそう言う。「自分も手〇キ行ってるんで、何も言えないっすけど」

フジワラくんは、別に妻が浮気していても「別にいい」のだという。自分もそういう店で情欲を発散しているし、妻には正直触れるのも嫌なのだという。でも、奥さんの家族とはうまく行っているので「別れたくない」と話す。フジワラくんの心理状態は難解だろうか?ひょっとしたら難解かもしれない。テレビや映画にはこういう夫婦は出てこないからだ。しかし、これこそが日本の夫婦事情のリアルである。

今日のこの話しは多分、独身者には理解できなかっただろうが、既婚者は特に補足しなくてもほぼ全員よくわかっているはずだ。結婚というのはこういうものなのだ。どうせこんなもんなんだから、あまり選り好みしないでとりあえずたまたまそこにいた人間と結婚してみるのが良い。ああ、こんなもんかと思ったら(必ず思うのだが)別れてもよいし、フジワラくんのように続けても良いのだ。別にフジワラくんは不幸なわけではない。こういう形の平穏もあるのだ。

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