『騎士団長殺し』読了

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いやはや、、、長かった~~~。。やっと読み終わりましたよ。どんだけ長いのよ、、、上下巻あわせて1040ページぐらい? 昔の文学作品みたくサクッと短くまとめてもらえないのかね~~と思ってしまったが、暇を持て余したこの一ヶ月、豊かな読書の時間を与えてくれた。そこにまず感謝申し上げたい。

これ読んでる人いるのかな?

どの本屋にもできの悪いレゴみてえにこの本が上下巻と積み重なっているけど、これだけ長くてテーマがつかみにくい(つまり、あまりキャッチーではない)小説を、まとめサイトと異世界ファンタジー隆盛の時代に辛抱強く全部読む人ってあまりいないんじゃないの?と思ったけど、けっこう売れてるらしいんで読む人は読んでるらしいね。ただ、知り合いで読んでるという人には今のところ出会ってないけど(交友関係狭いので)。

ただ、ドストエフスキーの「罪と罰」も上下巻で1000ページぐらいあったけど、あれは読むのに半年かかった(当時おれは19歳で電車の中でしか読まないと決めていたので、あの分厚い文庫本を半年以上にわたって持ち歩いていた。アホですわ)のを考えればすいすいと読めたし、物語も構成が練られていて起伏があってスリリングに読み通せたと思う。

中盤は中だるみしたとこもあったけど、ラストは綺麗に伏線を回収してまとまりよく終わっている。この長さでこの手堅いプロットはさすがにプロの仕事だなあ、と感心してしまった。

ハルキたんはもともと河合隼雄と対談するような、哲学や心理学のエッセンスを作中にぶち込む人なんだけど、今作もいかんなくハルキ節が炸裂していた。イデアだのメタファーだの、一元論だのラプラスの魔だの、そういうのが好きな人にはたまらないのかな~~、いかにも女ウケ狙ったガキっぽい世界観かな~~と思ってしまったけど、相変わらず大学生一年生が初めての長すぎる春休みに読むのにちょうど良いような作風と読みやすさ。でも読書感想文を書けと言われたら困ってしまう。そんな感じだ。

感想文ってのは作品の可能性をその時点で閉ざしてしまう行為だと思っている。そこで明文化することで、無意識化に曖昧に存在していたアレコレを捨て去って忘却してしまうわけだ。

すべては空(くう)だ。

この作品は東洋と西洋に共通して存在するこの真理でことたる。固定概念は人間が勝手に作り出すものだ。他に色んな存在になれたかもしれないあらゆるものを、勝手にこれ!これ以外ではない!と決めつけてしまうつまらん行為だ。哲学が好きなら何を言わんとするのかわかるだろう。別にわからなくても問題はない。哲学はこの世で最も役に立たん学問だ。(でもおもしろいのだ)

・・なんて話をしたくなる程度には何だかわからないお話だ。こう書くと「なんだか難しそう~~」と言ってみんな読まないのだが、誤解を恐れず言えばこんなに読みやすい小説は他にないと思っている。ラノベより読みやすい(もう20年はラノベを読んでないけど)。

なんでだろう?僕にもその理由はよくわからない。あるいは。たぶん。

・・・まあ、単純に平易な日本語で比喩や暗喩をくどいぐらい多用して、何でもない状況を事細かに書くからかもしれない。たぶん。あるいはそうかもしれない。

日本語として美しいなあ、流れるようにするする読めるなあ、、、と思う一方、日本語として自由すぎるなあ、、さすがに猫で例えるのくどいなあ、、「こと」とか「しかし」とか小説的にNGとされる言い回し半端なく多いなあ、、、「まるで~~かのように」とか「~~みたいに」なんて表現が多分500回は使われているが、アマが真似したら真っ先に訂正を食らう部分である。

まあ、そんなのを気にしながら読んだけど、ストーリーは単純で、妻に三下り半を突きつけられた絵描きさんが妻とよりを戻すだけのお話だ。主人公の年齢もおれとおなじぐらいだし、けっこう共感しながら読んだ。和製「ゴーン・ガール」? 結婚生活に煮詰まってる人は読んでほしい。

印象的なタイトルのゆえんは、「騎士団長殺し」という絵を中心に、夫婦関係や親子関係や友人関係や職業意識や人間の業や生き方・ライフスタイルみたいな普遍的テーマが群像劇のように展開される感じ。なんだかよくわからないが、読んでみると読みやすいのでオススメしたい。これほどいろいろ詰め込んで、登場人物もたいして多くないのに、よく原稿2000枚も持たせたなあ、、、プロはやっぱりすごい、、、、と舌を巻いてしまった。ハルキたんをちょっと馬鹿にしていたのを反省したいと思う。ハルキたんはすごい人だ。できるこっちゃないぞ、、、、

まあ、この気取った世界観と台詞、登場人物すべてが作者本人のメタファーであることなど、極めて映像化が難しい(と思われる。たぶん)ハルキたんだが、これを映像化できるとしたらアニメ以外にはありえないだろう。役者にこの小説の台詞をまともに棒読みさせたら完全にコメディになってしまうだろう。セックスの場面なんか例によってたくさんあったけど、ハルキたんとハルキたんがカマ掘りあってるみたいな気持ち悪さがあった(まあ、これは全作共通なんだが)。

とにかく、最近集中力がなくなって文字を読み連ねることに自信がなくなってたんだが、すげえ読みやすくてスルスル読めたんで、やっぱその力量に関しては間違いない作家だと思う。この作品が気に入ったら「レキシントンの幽霊」や「トニー滝谷」といった短編を読むといい。雨田具彦や免色渉といった印象的なキャラクターの原型を見出せるだろう。どちらも「レキシントンの幽霊」という短編集に収録されている。(もうこれも25年も経つのか・・)
レキシントンの幽霊 (文春文庫)

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