年末年始(ブラックアースよもやま話)

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仕事納め? いや、おれ明日も仕事なんで。

つうか1月1日、2日も仕事なんで。休みは大晦日の31日と1月の3日だけなんで。

普通の土日と変わらん(笑)。おせち?んなもん食わんでいいわ(笑)。どうでもいい(笑)。

だいたい、休みこれだけで、年賀状も書いて、親戚とかに挨拶回りして、職場で年初の挨拶したり墓参りしたり?おせち作って?大掃除もしろって?

バカかよ(笑)。誰がするか(笑)。

なんでこんな面倒な国に生まれちゃったんでしょうねえ、、マジで、クニ、クソ。

・・と、いつもなら吐き捨てるところがだが、ちょっと待ってほしい!

おれも先々週ぐらいに「ブラックアース」上下巻を買って、今週には読み終わったんですが、下巻の最後辺りを読んでいますと、先日疑問に思った「ブラザーランド」の疑問もだいたい解けましたし、スナイダー先生が口酸っぱく、おそらく本書の中で2000回は繰り返していたと思われるテーマも読み取れました。

それは、

国家は偉い。

ということです。

偉いというのはアレだが、左翼にしろ右翼にしろ、国家や政府を簡単に批判しますよねえ。そういう政府批判や国家にクソ・・失礼、文句を垂れる姿勢がかっこいいという空気もありますよ。国家を叩いとけば反骨ぶれてなんかかっこいい、みたいな。そんな人どこにでもいっぱいいますよねえ。

話がそれましたが、スナイダー先生の「ブラックアース」と「ブラッドランド」で何度も何度も繰り返されているホロコーストや大量殺戮の力学ですが、まあ、先生の言うとおりであると思うのですが、大量殺戮は国家や法の支配が失われた場所で起こるということなんですね。市民から市民権を奪い、法の庇護を剥奪し、外交権を有する者を抹殺し、その土地を弱肉強食の森へと変えてしまうことで、その土地では容易に大量殺戮を扇動することができる、ということなんです。その方法論を、ヒトラーはオーストリアやチェコスロヴァキア国家を破壊することで学び、ポーランド、バルト諸国、ベラルーシ、ウクライナ、ソ連西部地区でより大規模に実行した、というわけですね。これがホロコーストと呼ばれるものの骨幹です。

そして、これが「ブラックアース」という本の趣旨です。←これさえわかればもうこの本は読まなくてもいいかもしれん

まあ、この辺の話はいずれもっと詳しくしたいな、と思うのですが、ヒトラーはそれを理解していて、ユダヤ人を一掃するために、ユダヤ人の住まうすべての国家を意図的に破壊し、彼らから国際法や国内法の庇護・市民権を剥奪することで、地元民や占領者たるドイツ人(軍とSS)、過酷な東欧の冬の嵐によって一網打尽にする計画――これこそが東方総合計画と呼ばれるものの概要だったわけですが――を実行しようとしたのです。

結局、東方総合計画は失敗に終わります。ロシア赤軍が想定よりむちゃくちゃ強かったからです。ヒトラーの予定では、9月にはモスクワが占領できるはずでした。しかし、それは全然無理で、ウクライナを陥落せしめるのが関の山。スモンレンスクの占領などにはそれだけで2か月もかかったわけです。モスクワは絶対無理。冬が来てしまえば勝ち目はなし。ヒトラーは戦争に敗北したことを8月終わりには悟っていました。

そこで総統は、この戦争の勝利の条件をモスクワ占領からユダヤ人の絶滅へとシフトします。モスクワは占領できなかったけど、ユダヤ人を皆殺しにすれば戦争の目的は達成される、というロジックです。こうして、ドイツは狂奔し、ユダヤ人の絶滅へと官民一体となって邁進して行くわけです。

話がそれましたけど、国家は偉いという話に戻ります。

東部戦線で、ドイツ国防軍とロシア赤軍が覇権をかけて争った戦場は、ほとんどドイツとロシアに挟まれた国々でした。これらの国々は、戦争前にはソビエトに併合されてNKVDの大量銃殺とグラーグへの大量移送でたっぷりかわいがられ、国家は完全に破壊され、既存の民主的かつ穏健な政府指導者層は皆殺しの憂き目にあっていました。

そこへ独ソ戦が始まり、ドイツ国防軍がこれらの国を再占領します。特殊任務を与えられたナチス親衛隊が、これらソビエト政府の代表者たる新しい支配者と、テロの執行機関であったNKVDの職員たちを一刀両断に斬首して行きます。NKVDはドイツから攻められて占領地から引き上げる際に、その国の政敵たちを皆殺しにしてその死体の山を監獄に放置して逃げて行くのですが、ドイツ国防軍やSSはこれら死体の山をプロパガンダに利用し、「ユダヤ人=ボリシェビズムによる犠牲者である」と内外へ宣伝します。そして地元民を扇動してポグロム(ユダヤ人の殺戮=暴動)を引き起こします。それまでNKVDの手足として階級の敵を殺しまくっていた地元の警察官や官僚たちは、今度は新しい支配者による粛清に怯えることになりましたが、SSは彼らの恐怖心を利用し、忠誠を示すためにはユダヤ人の粛清に手を貸さねばならない、との強迫観念を植え付けました。

つまり、ドイツ国防軍に占領された土地で、対独協力に加わった新たなナチスの犬たちは、ほとんどがもともとNKVDの手下で、NKVDと共に大量テロルの手管をつぶさに学んだ、殺しのスペシャリストたちだったんですね。仕える主人がSSだろうとNKVDだろうと、彼らの仕事内容はほとんど同じでした。銃殺と強制移送です。ナチスは彼らを奴隷として使役し、ユダヤ人殺戮の一番汚い部分の仕事をやらせました。略奪と殺しに旨みを見出した民衆がこれに加わりました。ユダヤ人たちに既に市民権が失われ、法の支配が終幕を迎えていたから、このような暴挙が実現可能だったんですね。国家の庇護の下では、秘密警察も殺意に荒れ狂う民衆も、滅多に殺人を犯せませんでした。

もう一つ例を挙げれば、エストニアとデンマークです。両国とも似たような反ユダヤ主義が存在していましたが、エストニアでは99%のユダヤ人が殺されましたが、デンマークでは99%のユダヤ人が生き延びました。これはエストニアが上記の例で、NKVDとナチス親衛隊に、短期間で二度にわたって国家を破壊されたのに対し、デンマークはソ連の支配は受けませんでしたし、ドイツも同じ北欧人種としてデンマーク人を尊重し、既存の政府を破壊することも、ポーランドやバルト諸国のように国家を解体することもありませんでした。デンマークの旧来の政府に統治を任せていました。少数の例外はあったにせよ、デンマークではホロコーストはほとんど起きませんでした。一方、エストニアはNKVDとSSに国家を破壊され、無法地帯のブラックホールへと様変わりしていました。このような場所では、地元民やSSや警察の銃殺隊は、ユダヤ人にせよ、非ユダヤ人にせよ、殺したい者は誰でも殺せましたし、奪いたい物は何でも奪えました。国家が存在していたか否かで、ユダヤ人の生死は決定されました。国家さえ存在し、法の支配が生きてさえいれば、その国民に市民権さえあれば、外交権さえあれば、その国の人たちは理不尽な大虐殺から生き延びることができたことを歴史は示唆しているのです。

・・・という感じで、国家は偉いという話です。政府を批判し、時には国家を解体して国境を無くすことがユートピアにつながると考える人もいるのでしょうが、それは実はヒトラーと同じ考え方(アナーキズムとニヒリズムの融合)なんですよ。国家をなくし、地上を無法地帯のジャングルへと変えることで、動物の如き自然淘汰が人為的に引き起こされ、憐れなスケープゴートが大量に惨たらしく殺されることになるのです。

・・・・・・

いくら言い返してこないからって、政府・国家批判はほどほどに。カッコ悪いですよ。パスポートなしで海外旅行ができますか? 日本政府の庇護のもとにあるからこそ、どこにでも行けて無事に帰ってこれます。日本国民として市民権を持っていることが、いかにありがたいことなのかゆめゆめお忘れなく。

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