クリスピン・クローヴァーの「ビッグ・スライドショウ」

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カナザワ映画祭で、最後の土曜日の夜に上映された、クリスピン・クローヴァー氏の「ビッグ・スライドショウ」だが、これは難解なイベントで、開催前には「一体何が行われるのだろう??」と、いまいち全体像が見えずにいた。これは全三部作らしく、カナザワ映画祭で上映されるのはそのうち二作のみで、三作目はまだ完成していないのだという。

そもそも、おれが今回参加できるのは、2作目の「It’s Fine! Everything is Fine!」という、ポリオによる小児麻痺に苦しむスティーブン・C ・スチュアート氏脚本の、第二作目のみである。翌日の日曜日に三部作の一作目、「What is it?」が上映されるらしいのだが、これはスケジュールの都合で観ることはできなかった。

三部作のうち、いきなり二作目を観て、しかもそれで帰らなきゃならない?それで楽しめるの?と少し危惧したが、三部作の各作品にストーリー上の関連はまったくないらしく、二作目はクリスピン・グローヴァー氏によれば人生最高の一作ということなんで期待して観に行った。

おれはこの直前、金沢の海の幸を堪能しつつ、既にいいあんばいに酔っていたのだが、列に何度も並びなおされたり、「写真撮影を禁止します、携帯の電源を切ってください」と繰りかえされる館内のアナウンスを聞いて、その不穏な気配を前にいつしか酔いは醒めていた。

真っ暗な館内にクリスピン・グローヴァー氏が現れると、スライドショウが始めまった。

そのスライドは文字通り難解かつ前衛的で、その奇妙なスライドショウにあわせてグローヴァ―氏のつむぐ不可思議なストーリーが展開される。

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アートとしては面白いです。理解できないからヨイのかもしれませんね。

全然理解できん。。。その摩訶不思議な空間は、若いころ、インターンで行った沖縄の古い精神病院の患者のアトリエで見つけた、統合失調症患者の日記をおれに思い起こさせた。語りはリアルタイムなわけで、字幕も全然追いついてなかったし、これは理解できる内容ではない。空間の雰囲気に浸れればそれでいんだろうなあ、と早々に諦めた。で、ちょっと眠かったので目を閉じた。

映画が始まりました。「It’s Fine! Everything is Fine!」

これは絵はアートだし、ストーリーも意外に理解できる内容で、おもしろかったです。冒頭のババアのギョロ目がいい感じだ。

しかも、障碍者の苦悩と欲望を描いた、わりと直球なストーリーなのに、理不尽にタブーとして葬り去られ、日の目を見ることができない鬱屈と怒りと、ならばインディーズなんだし遠慮なくぶちかましてやる!という気概みたいなものが、映像から遺憾なく噴出していた。確かに良い映画でした。

スチュアート氏本人が主演を務めていて、美しく髪の長い女性を口説き倒してセックスをし、自分の体で唯一言うことを聞く右腕で彼女たちを絞め殺すというシーンがひたすら繰り返される。

スチュアート氏がモノホンの小児麻痺(でも頭は完全に正常)なわけで、映像には非日常性のようなものが生まれていて、これは差別感情があるからこそ非日常と感じるわけなのだろうが、特に隠すことも臆することもなく、素材を活かしてアートチックに演出し、幻想的な犯罪映画に仕立てている。

上映後、グローヴァ―氏の、作品に対する解説がひたすら語られていたが、一作目の「What is it?」も、ダウン症の俳優を出演させているが、ただ単に普通に芝居をさせているだけなのだという。彼は障害者を臆せず使うことによって、表現の幅が広がり、観客に考えを促すことができるのだ、と言う。小人プロレスのようなロジックであるが、差別だ不謹慎だ強制的な労役だ!とクレームかます自称リベラル善良派の人びとによって、小人プロレスの演者たちはのきなみ失業に追い込まれた。グローヴァ―氏の映画もメジャーの配給会社からはのきなみ総スカンを食らったのだという。

どうすれば良かったかなど、おれのようなボンクラにはわからないが、別に本人がやりたいというならいいのではないだろうか? スチュアート氏の本来の脚本は、もっとエログロナンセンスで、ポルノに近い内容だったという。別に障害者だって性欲はあるし、相手してくれない女にはムカつくし、フェティッシュな欲望を持ったりもする。

障害者と接する機会があまりに少ないからこそ。彼らは偏見の対象であり続ける。障碍者や高齢者とかかわった経験もなく、安全圏からきれいごとばかり言ってるサブカル野郎にはおれも心底腹が立つし、胸がムカつく。もっと身近に接する機会があれば、とも思うが、身近に接するからこそ彼らを「生きるに値しない生命」と断じ、施設を襲撃したキチガイもいた。そして彼自身も精神障害者であった。このモラルのハードプロブレムを解決することは、地球が存在しているうちは不可能かもしれん。しかし、こうした障碍者の慟哭を作品として形にし、採算を度外視して世界で上映しているグローヴァ―氏はなかなか骨太な人物であるなあ、と思った。

深いこと考えなくても、なかなか娯楽映画としても、アート映画としても、おもしろくてオシャレな映画なんで、機会があれば観てみたらどうでしょう? 本気のファックシーンもあるし女優も美人ばかりだし。一作目も観たかったな。

三作目が完成したとして、どこで公開されるのだろう? カナザワ映画祭はもう終わってしまったのだから。タブーを恐れぬ骨太な誰かが、どういう形でもいいから一般公開してくれることを願っています。

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