ティモシー・スナイダー

シェアする

今日本屋で「ブラッドランド」のティモシー・スナイダーの新刊の邦訳が出ていて軽くレジ横でフェアなんかされてて驚いた。


「ブラックアース」。モノクロの表紙がいいカンジである。センスいいなあ、、、

「ブラッドランド」と同じような雰囲気の表紙で上下巻、でも上下で450ページぐらいで、わりとコンパクトな本なのに、上下で6000円以上したので頭にきてほぼ立ち読みで済ませた(笑)。
(下巻なんて3分の1ぐらい役者のあとがきと参考文献の羅列なのに3000円以上するんやで! えげつないのう! 商業主義者に大量テロルを行え!

目新しいところがあるのかと言われたら、第一次大戦からロシア革命、ドイツ革命、と経てヒトラーの思想の変遷みたいなものをマニアックに追っている前半が面白くてじっくり読んだ。

後半は「ブラッドランド」でも書かれているような内容となっていて、重複した内容。でもヒトラーの反ユダヤ思想が、単純な嫌悪に加え、フェルキッシュな過激思想を標榜する自分にとって、地球規模的というか、国際主義的というか、人種などを乗り越えて広がるユダヤ教の教義について、すごく危険視していたのだというところが強調されていた。

また、ヒトラーが単純な狂人とは異なり、優れた戦略家で理論家であったがゆえに、今でも思想的賛同者が多くいるという現状について踏み込んでいた。

あと、「ブラッドランド」では省いていたルーマニアやヴィシー・フランス、スロヴァキアやクロアチアの衛生国家のホロコーストの関与をまとめていた。「ホロコーストの加害者の半分はドイツ人ですらなかった。ホロコーストはすべてドイツ国外で実行され、被害者の97%はドイツ国外のユダヤ人だった!」という感じでまあ、ホロコーストについて世間が誤解していることを正そうという熱い意欲がほとばしっている。

以上のように?ティモシー・スナイダー氏は新しいタイプの歴史家だと思うが、ソ連崩壊後に開け放たれた新資料を読み込んで、体系的に血塗れ真っ黒な20世紀前半の中東欧をまとめ上げたお人で、我々が思うよりも、はるかに独ソの革命政権の暴力性が組織的かつ計画的で容赦のないものであったことを改めて告発した、まさに20世紀の『悪』の専門家である。

今回の「ブラックアース」も、大抵の人はタイトルの意味がよくわからないだろうと思うが、ヒトラーがレーベンスラウムとして血眼になって取りに行った、「ウクライナの肥沃な黒い大地」を意味する言葉だそうだ。ちなみにおれは表紙を見た途端に「ああ、ウクライナのことかな」とわかったゼ?←自慢

ヒトラーは第一次大戦時の英海軍の海上封鎖で数十万人のドイツ国民が餓死し、ドイツ革命後も祖国が食糧自給できなかったことが心的外傷だったらしい。何よりも食料を自給する。ドイツの都市部に何が何でも食糧を供給する・・そういった執念が、独ソ戦でスモレンスク陥落後、モスクワ攻略の最初で最後の好機が訪れた際に、「いや、キエフが先だもんね」という判断に至ったのかもしれん。電撃戦の父、若き猛将グデーリアンの熱弁・説得も虚しかった。フォン・ボックとフォン・ブラウヒッチュの両元帥は戦々恐々としながら見守るのみで、陸軍参謀総長のハルダーは決定を聞いて首を横に振った。「優先すべきは戦争経済」。フューラーの決定に色濃く影響をおとしたのは、苦い飢餓の記憶だったのかもしれん。。パウル・カレルの「バルバロッサ作戦」”モスクワかキエフか?”は是非読んでくれ! ああ残念! なんでヒトラーは8月の時点でモスクワを占領するチャンスがあったのに、それを無駄にしてしまったのか、、、残念無念。。。。という悔しさで夜も眠れなくなる逸品だ。強くお勧めする。ロシアは伝統的にペトログラード(レニングラードでもサンクトペテルブルクでもいいけども)とモスクワが国土の大動脈だ。ドイツ国防軍はそのどちらの占領にも失敗したのだから負けは必然だったのだ、、、

まあ、そんな感じで、スナイダー氏は「ヒトラーのこと好きなんやろ?」と言いたくなるぐらいしっかりあのちょび髭の頭の中を研究していると思うのである。。。この調子でロシア革命直後の赤色テロル、内戦、戦時共産主義、ネップ下のゲーペーウーの民族弾圧を書き下ろしてくれんかな。。。。この辺は「ブラッドランド」でも網羅できてなかったからな。。。。

あと、有志の尽力で2017年の1月にスナイダー氏が来日公演する予定とのことだ! これは絶対行く! 仕事休んででも行く! 楽しみだすな。

↑↑
なにか一言メッセージでも残して行ってください