恋は雨上がりのように リアルなのかオヤジの夢か

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熱を出して会社を休んだ。そこで急遽漫画を読んだ。

試し読みだけのつもりだったのだが、おもしろかったのでついつい課金して全巻読んでしまった。序盤からぐいぐい引き込まれた。絵も上手だ。

ミステリアスな女子高生が、バイト先の45歳のオジサン店長に恋をするお話である。
こう書くと気持ち悪い話だな、と思うであろうが、なかなか女子高生の心の動きなどが瑞々しく、可愛らしく、かつありえそうな感じに表現されている。


まあ、このリアルさは作者が女性だからだと思うのだが「アンタ若いころにバイト先の店長に惚れてたんやろ?」と問い詰めたくなるほど丁寧に再現されているのである。

バイトはファミレスで、このバイト中の風景や、その他のバイト仲間たちも異常なまでにリアルに再現されており、作者がこの手のバイトを実際に経験していることはほぼ間違いないと請け合える。

この「本当にありそうなカンジ」がこの作品の最大の魅力だと思うが、主役の少女自体は完全に創作の産物というか、魅力がありすぎて非現実的である。しかし、このような偶像をリアルすぎる世界で動かすことによって、十分物語化できるのだなあ、と考えながら読んだ。

特にリアルさを感じるのは、恋役の「店長」。45歳バツイチ、店長6年目、毎日サビ残休み少なしの男。バイトには気を使ってぺこぺこし、客にはクレームつけられてぺこぺこし、とりあえず現実をそっくりそのまま合点してぺこぺこする……

作品の中ではペコペコしてばかりのださい店長という位置づけで、さえないオーラを遺憾なく噴出しているのだが、この男こそ日本社会においては最も完成された社会人である。私心を捨て、誰にでも頭を下げることができ、長時間労働をものともせず、自分の家のように常に揺るぎなく店に立っている。これがいかにすごいことなのか、どんな社会人にもそれはわかる。子供にだってこの男の魅力は理解できるだろう。

店長のキャラ作りは巧妙で、激務に「やつれて」いるのか太っていないし、禿げてはいないけどストレスなのか十円禿げができている。ファミレスは服装や髪型にうるさい世界である。店長の髪も服も一応はキッチリ整えられている。45歳で見た目がキッチリしているというのは相当なアドバンテージである。
喫煙者で不衛生な生活を送っており、他のバイトの女の子たちには「臭い」と嫌な顔をされているが、それは店長が男やもめの生活をしているからである。つまり、子供はいるがバツイチであり、離婚してからは特定の相手はいない。これはこの物語がドロドロしないための救済措置だと思うが、上記のごとく店長のキャラ造形は巧妙に練られている。

そう考えると、この店長がモテるのはごく当然で、ちょっと周囲より大人びた陰のあるイメージとして描写されている主人公の少女が、この店長に惚れるのは特に違和感は感じられなかった。しかも状況や歳の差を考えれば普通に付き合うこともできないであろうし、店長が簡単に手を出せないのも理解できる。かといって邪険にもできないし、好意を持たれて頬が緩むのもわかる話だ。

とはいえ、本当は二人の間に横たわる障害は結局大したものはなく、年齢差、立場の違いをひたすら気にする小市民的店長と、まっすぐに相手にアタックをかけるだけの純粋さを持つ主人公のミスマッチがいかにも平和で心地よい。

好きな人の挙動や言葉の一つ一つに心を激しく揺り動かされ、いちいち言動を深読みし、大喜びしたり傷ついたり……主人公の純粋さがとても可愛らしい。このリアルさは女性にしか描けないだろう。

愚直に長時間仕事をする店長の絵に描いたような社畜的姿も、気の毒ではあるが店長自身が別にツラそうでもないので、すごいなあ、と思うだけで平和である。

おっさんの夢を凝縮したような物語だが、現実には若いバイトの娘や人妻と店長の不倫なんてのはザ・定番であり、全く驚くに値しない設定。どんなにぺこぺこしていようと「店長」は「店の中ではアメリカ大統領並みの権力者」である。権力者が若い娘にモテるのはごく当然のことで、自然の摂理。ほとんどの「店長」はそれを自覚していて、若い娘とお知り合いになり、アバンチュールを楽しむのを「役得」だと思っている人も多くいる。
この物語のように店長が頑なに手を出さないことのほうがよほど非現実的だ。現実はもっともっと肉欲でドロドロに汚れきっているものである。
そう考えると、これはスリルやドキドキを味わいつつも、ひたすら平和で無害な漫画だ。こういうストーリーは女性の作者には絶対勝てないよね。。。乙女心がリアルすぎる。いい歳こいて少年ジャンプばっかり読んでちゃ駄目だぜ。。。

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