闇と病み

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これはこないだテレビで、著者の押川剛 氏がTVで出ていて、この本の中で書かれているようなことをしていた。精神障害者やDV男、アル中や犯罪者予備軍のひきこもりなどを、親の依頼で精神病院や専門のグループホームなどに非暴力的手段で説得し、移送するのである。番組自体は迫真のルポタージュで、すさまじい緊迫感にワタクシも生唾をごっくんごっくんと嚥下しながら真剣に観た。そして後日この本を書店で見かけて手に取った。

これはいわゆる引きこもりたちの黙示録である。精神病者、ニート、登校拒否児など、家庭にこもってわがまま、贅沢しまくり、親を暴力と恫喝で使役し、快楽を満たすための手段とする。隷属させられた親は、我が子に怒鳴られ殴られるのが怖くて、食べ物やアニメグッズ、酒に雑誌、小遣いを惜しみなく与え、ぎりぎりの共同生活をおくっている。

この屑どもに根をあげた親は、我が子を病院か施設にぶち込みたいと願う。しかし首尾よく精神病院に叩き込めたとしても、昨年改訂された精神保健福祉法により、入院は長くても3か月。幻覚・妄想、自傷他害の恐れがある危険な病人を、病院は人権の美名に隠れあっさり社会に解き放つ。彼らは与えられた薬も退院指導もすべて拒絶し、酒におぼれ、再び親を奴隷とし、自堕落で無為な、享楽的生活を続ける。今や殺人事件の53%は家族内で起こっており、この割合は戦後急上昇しており、特にここ数年で顕著な上昇を見せている。入院の短縮化が一役買っているのである。

日本の精神病院は長いこと入院期間が長すぎることが叫ばれていた。病気は落ち着いているのに身内と決裂した患者は数十年に及ぶ社会的入院に及ぶ。これを減らそうととにかく退院を急ぐ取り組みが為されていた。ヨーロッパはほとんど社会的入院がないらしいぞ、と漠然とした憧れを持ち、無策に社会に解き放ったのである。しかしこれら病人、或いは病人とはいえないまでも、はっきりとした反社会的気質を持つ者、パーソナリティー障害や引きこもり、ニートなどを、長いこと病院で飼っとく事はできん。彼らははっきりとした幻覚・妄想などの症状を持たず、高い教育を受けているために知能も高く、服薬で治療することができないからである。精神病院ははっきり言えばリスペリドンなどの抗精神病薬で凶暴な患者を薬漬けにし、牙をもいでコントロールするというのが治療の基本である。作業療法などやっているがアレは単なるおまけのごっこ遊びである。服薬が治療の大原則。薬が効かないただ単に内に強烈な暴力性を秘めている人間を、病院も疎ましく思い、スタッフもそのような患者を恐れ、PSWは医者の走狗となってさっさと家族に退院を迫る。その結果、解き放たれた患者は最終的に親を殺害し、ホームレスや犯罪者と化し、結局サツのお世話になる。精神保健福祉法の改定のしわ寄せは、はっきり警察に押し寄せている、、、、、

この本で書かれている事例はいずれも強烈だ。病に狂った者、人生に敗北した有り余る闘争本能を持つ落ちぶれたインテリたちのなれの果て、救えぬ人々の営み、泣く子も黙る地獄に落ちた屑どもが活き活きと描かれる。しかも事例はいずれもどれ一つとってもハッピーエンドにはつながらず、ぶつりと切れて読者は茫然自失である。もはや彼らが人を殺すことは避けられそうになく、医療も司法もお手上げ状態。実の親でさえ、「もうあの子を殺してください!」と著者に訴える。迫真のルポタージュだ。

こんなことが起こっていたなんて、、、、手が震えるほど恐ろしい。確かに頭おかしい感じのヤツは巷にあふれている。彼ら病者と犯罪者の中間に位置する「グレーゾーンケース」は、全く働かず、現実検討能力がなくプライドが高いため、「肉体労働はいや」、「月50万はもらいたい」だの狂った要求を繰りかえし、しかも絶対に努力をしない。親に金を出してもらって学校に入っても一か月で辞め、好きなことだけは延々続ける(アニメグッズを収集したり、アニメを録画したりは徹底的にやる。しかも親にやらせる。できないと暴れる)。世にいう、屑である。屑としか言いようがないのだが、彼らもまた生きていて、人一倍高いプライドと闘争本能を持て余している。これが厄介だ。結局最終的には一番自分に親しい、世話を焼いてくれていた、一番優しい人々を殺害し、取り返しのつかない苦界へと堕ち、命が尽きるまで人々に迷惑をかけ続ける。特にかわいがっていた猫をいきなりバットで殴り殺し、「みーちゃんがいけないんだ、、、」と泣きながら震える声で立ちすくんでいたという息子の話は読んでほしい、なぜ家庭が崩壊するのか、その流れが手に取るようにわかる。貴方がその猫をかわいがっていたら、こんな家族を許せますか?面倒を見ますか?家族に拒否されれば駆り出されるのは衛生班か警察である。

ナチス政権やソビエト連邦ならば、これらの存在の生きる権利をあっさりと否定し、執行部隊による暴力で問題の解決を図るだろう。しかし今の日本でこれらお荷物をどうするか、というのは最も大きな課題へと成長しつつあるのだ。すごい話だ。必読と言っていい。お化けの100倍怖い、苦界でもがくクズどもの営みだ。

これをみて、平山夢明のネタ小説、「いま、殺りにゆきます」を思い出した。この間、これの映画を観たのだが、できははっきり言って安かったが、暴力性を持て余した狂った人間たちが、弱い立場の女性に襲いかかる様子が淡々と描かれていた。

キチガイどもに理屈はいらぬ。殺し、犯し、奪うのみ。猛獣は檻に入れるしかない、、ちなみにヨーロッパで病者を檻から解放した70年代以降の人権政策、歴史上最大の失敗と評す識者がいるという。ただ単に警察が忙しくなっただけだからだ。このような話は通りいっぺんの知識では得られない。深く踏み込めば踏み込むほど精神保健の深い闇が見えてくる。ナチスの「T4作戦」は本当に間違っていたのか?あなたも是非深く考えてほしい。今、有象無象の家の中は戦場だ。見て見ぬふりは許されない。

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