「ノーカントリー」と無法地帯

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コーマック・マッカーシーの「血と暴力の国」が原作のクライム映画。
「ファーゴ」のコーエン兄弟の監督作品だ。

正にドストライクのテキサス犯罪映画である。
80年代の無法地帯テキサスで麻薬組織や殺し屋に付け狙われるとある男の物語だ。

バビエル・バルデムが演じるアントン・シガーという怪物じみた戦闘力を持つ殺し屋が、圧倒的存在感を放っているこの映画。マジでとんでもない怪物ですよ。人間じゃないです(笑)。

冒頭でいきなり保安官を絞殺、車を奪ってトンズラ。逃げる道中でも民間人を殺して歩き、関わった人間全てを血の海に沈めていく。死神のようだ。

対するモスという名のテキサス種馬男。麻薬組織の抗争跡地で多額の現金を発見し、そのままトンズラ。ストーリーは単純で、組織に雇われたシガーがモスを追うという筋書きだ。

このモスも中々の男で追跡してくるシガーを相手に最初は対等に戦ってみせるがやがて・・。
どんな重要そうに見える人物でも、おおいなる運命の前には無力。突発的暴力によって簡単に命は失われる。その予想のつかない理不尽は観客をおおいに不安にさせる。

原題はNo country for old men(老人の住む国じゃない)という意味で、現代社会の人間の腐敗した異常性を喚起してくる映画だ。
「人々が敬語を使わなくなってからおかしくなった」
「ヒッチハイクはしないほうがいいよ、危険だよ」

老人が素っ裸で首輪つけて逃げ出してきたエピソードを聞いて噴出す若い保安官など。
おじいちゃんがため息つくシーンが頻繁に挿入されている。

no-country-for-old-men-4[1]1老人は若い奴らの異常な残虐性にほとほとうんざりしているようだ。その象徴がもう1人の主人公であるトミー・リー・ジョーンズ。
犯罪を取りしまる、犯罪者にとっては一番恐ろしい存在でなければならない法の番人が、最近の若いのは・・とため息をつくばかりでまことに頼りない(笑)。トミー・リー・ジョーンズのしけたしかめっ面ははまり役で、実に頼りない保安官を好演している。

この保安官はシガーにもモスにもほとんど絡むことなく、ひたすら無力な存在。観客目線と同じなわけだ。理不尽で無軌道な犯罪の数々を前にして、世の中狂ってるぜ・・と眉をひそめるだけで何もできない。何か事態を変えられるような力をもっているわけでもないしそんなに勇気があるわけでもない。人間の説明不可能な残虐性を前にしてただただ立ちすくむだけ。一体どうなっちまったんだ・・と。

コーマック・マッカーシーはアメリカ南部・メキシコの荒野ばかり変質的こだわりで描く作家で、「無法地帯」を語る上では避けて通れない作家であり、テキサスという土地も「無法地帯」を語る上では避けて通れない土地である。

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