トールマン 下層のループを断ち切れ

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2012年アメリカ・カナダ・フランス映画。

これは「マーターズ」というぶっ飛んだスプラッター映画を作り上げたパスカル・ロジェのホラー映画?だ。

タイトルがすべてを物語っているのだが、こんな童話がかつてありましたねえ、、←半分ネタバレです

もう旧作だしネタばれしてしまうことにするので、嫌な人はお戻りを。


これは下層の家庭に生まれた不幸な子供を助けよう!という正義感にかられた奇妙な団体が巻き起こす救出作戦の全貌を描いた映画だ。

ダメで酒飲みでDVで働かない男。アバズレで身勝手で強欲で怠惰な母親。こういう家庭、子供だけはじゃんじゃん作りますよねえ。すぐ産むんだこれが。

で、まともな教育も与えられず、栄養状態も悪く、すぐ殴られてののしられてビクビクした自信のない子供になる。そしてまたすぐ似たようなゴミとトラッシュなファxクにふけり、すぐ子供を産む。無限にこうした営みが繰り返される。本来ならいくつもの可能性を秘めた子供たちのはずだが、馬鹿な親の下に生まれたばかりに、馬鹿な親と似たような人間になってしまう。これは毎日我々もニュースなど観ていれば感じるアレコレである。ちゃんと育てればいいが、時にはペット用の檻の中に監禁され、糞便の処理が嫌だからと水も食料も与えられず、毎日拷問されて死ぬ。なんのために生まれたのかも誰にも教わらぬまま、、、このような鬼畜の親にばかり人権を与え、子供を見殺しにしているのが我々の理想郷の現状である。

だいたい子供は親を選べなすぎる。生まれ落ちた瞬間人生のほとんどは決まっちまう。おぎゃあと産まれて病院を出たあと、アル中の無職親父とアバズレの母親が待つ家へ帰るのと、金持ちで医者で教養のある両親のもとに帰るのと、どっちが幸せだ?どっちとも言えないとするのは欺瞞である。思い込みや理想や願望で語ってはいけない。こういうのは統計的数字である。貧乏な家に生まれた子供はずっと貧乏だ。トマ・ピケティが流行ったばかりだし、もういい加減この議論は受け入れてもいいだろう。清貧などというのはかび臭い偽善語である。貧乏人は不幸で十分な教育もチャンスも与えられず、親と同じようなダメな仕事に就くしかない。結局そうなっていることが多いのだ。

となると、ダメな親から引き離してまともな環境を与えたらどうなるだろう?親から離れたら寂しいかもしれないが、裕福で食うに困らずきれいな衣服を着て高い教育を受けられるとしたら?それでもアル中の・・(略)のもとに留まりたい理由は何だろうか?・・・・まあそんな感じでこの監督らしいひねくれたお話だ。モラルのタブーに踏み込む姿勢は「マーターズ」と同じながら、今回は手法がまったく逆。不幸な子供たちが誘拐されるのだが、殺されるわけでも監禁されるわけでもレ×プされるわけでもなく、平穏で清潔な都会の里親の下で高い教育、十分なチャンスを与えられ、本来なら芽のうちに摘み取られるはずだった才能を花開かせる、、、そんなお話。というわけでこれがネタバレである。

「テキサスチェーンソー」ジェシカ・ビールがナイスマダムとなって登場。今回もなかなかの存在感を発揮している。といっても「テキサスチェーンソー」のエロさは全くなく、アクションもずっと控えめ。落ち着いた演技である。

まあ、この映画「マーターズ」のような残酷描写を期待するとまったくの肩すかしだが、アメリカのド田舎の寒村で、ダメな生活を送る田舎もんどもとその下で生きるしかない子供たちの風景が非常にリアル。あからさまな虐待描写とかはないが、もうダメな感じが遺憾なく噴出している。昼間から酒飲んでカミさんをどつくダメな親父。家も悲惨でトレーラーハウスや廃墟みたいなボロ家だったりする。子供はなんも悪くないのになんでこんな環境で生きなきゃなんないわけ?!救わないと!!というのは思うだけなら誰でも心あたりがあるのではないだろうか。

個人的感想を述べれば、やはり「マーターズ」級の・・・そこまでいかないにしてもなにかあるのではないかと思い本作を手に取ったのだが、こういう問題提起をしているあたり、「マータ-ズ」の怪しさがますます際立ってしまうように思う。監督のインタビューもみたが目のイったボディランゲージのせわしない、なんか頭おかしい感じのオジサンだったので余計不気味である。そもそも貧困下の子供の不幸を描きたいなら、別にこんな手法でなくてもいいはずだし、結局娯楽映画としてこんな脚本にしたはずなんだからねえ、、まあ、イマイチだったよね、、、ただ、この映画が良かったのは、ダメな親たちが、少なくとも犯罪的ではないところだ。ダメ人間だけど子供を愛しているし、誘拐された子供のためなら自分が死んでもいいと本気で思ってるんだよ。でもダメなんだよ、、愛だけでは救えない、、悪の循環からは逃れられない、、と主張しているのだ。

日本なら、だいたい愛があればどんな劣悪な環境でも「アナタは幸せよ~~ママに愛されて」なんていうきれいごとで見て見ぬふりするだろ?そこはちょっと共感しちゃったよね。愛がなくたっていい大学行かせてもらって好きなだけうまいもの食ってる人間なんかいくらでもいるしな。金がけっこう何でも解決する。貧困は犯罪の母。パパとママの愛情が足りなくても金さえあれば子はけっこうまともに育つ。子供の気持ちとか意志は全く無視するところもイイ。周囲からどんなに悪と糾弾されようとも、子供は守る!これは正義ではなく狂気だと思うが、これぐらい狂わなければ子供は救えないということなのか。ま、簡単に子供を作るなよってことだ。

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