おれは古谷実のファンだ!と断言できるほどのファンじゃないと思うが、著作は全部読んだし、毎回あれだけテーマも世界観も似通っているのに、読者に読ませるのめり込ませる力は相当なもんだといつも思う。おれは普通は青春映画はみないが、上記のように古谷実にはちょっとしたひいき目もあり、観てみた。
※例によって過去記事の復旧
暑苦しく顔どアップで大声でわめきまくってるせいか、ギャーギャーうるせーな龍馬伝かよと思ったりもしたが、まあむやみやたらとエネルギッシュな映画だ。原作はそれこそ真綿で首を締められるかのような息苦しさをビンビンに感じたものだが、これが話題の監督の映像的な癖なのかもしれん。それともわざとか?まあよくわからないが。
さんざんにボコられてどつかれて蹴り倒されて、ヤケクソで殺人犯になってしまい、エドワード・ゴーリーの絵本みてーに一切の救いなく落ちるところまで落ちていくのは原作と同じながら、ラストは原作を大幅に改変している。改悪ととるか、粋なことするじゃないと頬を染めるかは観た者次第だが、おれ個人としてはラストは原作の方が良かった。ヒロインの気持ち悪さは現実離れしすぎていると思いますが、これは何かオチがあるんだろう、このキャラで序盤わざと客をムカつかせて後半派手にぶっ殺すというよくあるアレをやるのかの思ったら最後の最後までこのヒロインは主役の都合のいい”救い”そのものなのであった。んだそりゃ。少年ジャンプかよ。
ラストの変更は妙な政治思想を作品に絡ませてそれに縛られて身動き取れなくなっちまったからじゃないだろうな?妙な政治思想というのは、原発云々のアレである。もはや原発を反対して善人ぶるのが日本国民の矜持になった感すらあるが、この監督はとにかく原発憎しの言動がかなりイタい。無理やり憎むべき悪を作り出してそれに対して勝手にムカついてdisっているかのようだ。もう多くは言いたくもないが。
だが、作品を観てると、この監督は社会に対する憎しみや怒り、攻撃性がどうにも抑えられないように思える。キレイゴトのラブソングを路上でクネクネと歌う爽やかなイケメンが、「タクシードライバー」のデ・ニーロみたいな抜き身の鬱屈野郎に殺されそうになるくだりとか、いけ!ぶっ殺せ!さっさと殺らんか!とおれも思ったし、なんだか自分と同類のドー×ーくささを感じたのだけどね。。
社会は嫌いだしぶっ潰したいが、社会を台無しにした原発は許せないという、理解し難いアンビバレンツをこの作品から感じたのである。原作は社会憎悪一本のシンプルな短編だが、この映画は監督が何考えとるのか最後までわからなかったのであった。
まあ、おれは頭悪いですし鈍い方なので鬼才の考えなど理解できないものかもしれない。まあエネルギッシュで暴力描写の激しい映画ということで観る価値がある映画だと思います。