2010年のドイツ・カナダ映画。言葉は英語だ。
僕たちのダメ映画家、ウーヴェ・ボル監督作品。最近社会派映画に目覚めたのか、これもそんな感じである。
ボルの映画ってほんとに素人くさいんだよなあ。でも熱意はすっごく伝わってくるんだわ。いつもいつもなんらかのやる気は伝わってくる。社会に何かぶちまけたいという思いが!ほとばしる熱情が!まあいつも空回りしていることは否めないが、これはまあまあみれる作品だった。
過去には「熱砂の虐殺」やアウシュビッツをテーマにした映画を撮っている。できばえもほんと両極端。ほんと不安定の権化のようなアホドイツ人監督である。
今作の主人公は親離れできない23歳のブルーカラーのダメ男。末端でクソみたいな仕事しながら社会憎悪を膨らませている。スーパーフライ級のしょうもない理由で大爆発し、街に出てってリアルポスタルを始めてしまうというシンプル極まりない映画だ。
ダメなテロリストである。共産主義でもイスラム原理主義でもない。
単なる加藤である。
しかし舞台は銃社会アメリカ。加藤は加藤でもマシンガン持った加藤は嫌である。しかもどういうわけか首都警特機隊のようなアーマーを身にまとっており、サツの弾は全部弾き返してしまうというチートモード。
いや、わかるよ。おれも年収200万以下のくそ貧乏時代があったし、そのころは世の中の全てが憎かったものだ。典型的な負け犬。昔の自分を見ているかのようだったし、当時はおれもこういうことしたかったよ。ボルもこういうキャラに共感してしまっているように思える。彼も昔苦労したのかもしれん。
でも「テロリスト」って邦題はおかしくねえか?原題も「Rampage」だしな。テロってのは政治的な目的を暴力で達成しようとする行為のことだ。この犯人はダメ人間で社会に適応できなくて大虐殺を始めるが、根幹はコロンバイン高校銃乱射事件のような話だと思う。あれはテロか?違うだろう。秋葉原の加藤はテロか?違うだろう。社会不適合者が社会に復讐するという構図は普遍的なものだと思うし、それをテロと呼ぶことは今までもこれからもないと思う。これは津山三十人殺しの海外版だといえる。あれはテロか?ちゃうやろ。何の主張もない革命家であります(笑)。
いや、ひと様のレビューみてると、この映画を「一人の人間がテロを起こして何人殺せるのか再現した映画といえる」みたいなことを書いててな、、なんだかな。。それボルに騙されてると思う。ボルはこういうこと言いたくなるような映画を作ってしまう男なんだ。。他の作品も観てみてや。タダの馬鹿だとすぐにわかると思うで。
そんなわけですが、神(注:ボル)に愛されたこのダメなテロリストは誰にも特に邪魔されずやりたい放題殺しまくる。大虐殺だ。超笑えた。心が洗われるようだった。しかしこれは設定とか全部ギャグだと思うのだが(なにしろこのダメ男の決起する理由がくだらなすぎる)、もうちょっと演出面で笑える部分を増やしてくれればコメディとして観れたはずだが、いかんせんそこはボルだからなあ。ギャグじゃないんだよなあ多分これ。ボルはマジなんだと思うんだよ。。。けっこう真面目に撮ってるみたいなんだよね。結末も超ありきたりだけど割とよくできているというかあ、、、ああ本気だったんだなあとそこはかとなくわかってしまう感じ(笑)。
続編も控えてるらしいで(笑)。楽しみかも(笑)。
おれとしてはこんなの真面目によくやったなあと思うんだけど、このヤケクソな感じはブットゲライトの「ネクロマンティック」の後半あたりを連想させた。
やっぱりドイツって。。。無言になるしかない国だ。真面目なんだよね。。質実剛健(笑)。暇な方はボルの本気をその目に焼き付けてください。