残酷な時代劇が好きだ。
やはり「暴れん坊将軍」では漢の闘争本能は満たせない。
斬ってさばいて引きずり出して、むせかえる血の香り、ぶちまけられたハラワタにゲロが混じる修羅の庭。
時代劇とは本来そういうものではなかったか。なかったかってどう考えても違うが、血風吹き荒ぶ、こう表現するしかないひどい時代劇がみたい。一個でも多く。そういうのはないものか。
こう考えた時に一つ思い浮かぶのはやはり「シグルイ」である。”死狂ひ”。ひでえタイトルだ。
“完璧な封建制は少数のサディストと多数のマゾヒストで構成されるのである”
すごい説得力である。これ今の日本もそうだもん。”お上”が大名やら国やら官僚やらから、企業のトップに変わっただけだもんなあ。
とんでもない命令でも文字通り命をすり減らしてでも、家庭を捨ててでも遂行する。この命令に絶対服従のマゾ的気質で日本人は死ぬまで働き続けるのである。
そもそも武士とか侍ってなんだ?なんか武士道やらなんやら誇り高いイメージがあるが、やさぐれた無職野郎がでかいポン刀ぶら下げてヨレヨレの着物一枚で殺しあってる世界に人道もクソもあるかこのバカたれ!しょせん剣術も何も殺しの手管にすぎん。いかに相手を確実に殺すか、だまし討ちにするのか、それを競ってばかりいたに違いないではないか。
斬れば人体は損壊するし血もドバドバ出るし脳みそもハラワタもずりだし放題に決まってる!
斬って血も出ない時代劇に何を説教されようとそんなものに説得力はない。
ニートとかひきこもりとか中卒の悪ガキが大小二本と有り余る闘争本能性欲をぶら下げてその辺歩いていたらと想像してみろ(笑)。女や子供は外に出ることは不可能だ。座敷牢に閉じ込めるしかない!(´Д`;)ハァハァ…
それに”お家”の描き方。
認知症のボケジジイが剣の達人という最悪の事態。
殺しの手管に長けた狂人。
まさにキ×ガイにハモノという状態。
わりを食うのは女や子供だ。圧倒的暴力の前になす術もない。こういった視点はハネケの「白いリボン」とほぼ同じではないか。
だが困ったことにこの最悪の狂った時代に繰り広げられる臓物まみれのチャンバラ劇が、たぎるのだ。ただただ、たぎる。
三下のような脇役ですら、強烈に光っている。残酷の中にしかリアリティを感じられなくなって久しい僕だが、刀持ってた時代の真実はこんな惨たらしい恐ろしいものだったに違いないと、むねをときめかせてしまうのである。