狼の口 ヴォルフスムント

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いや~なにこれ~

ひいた~

今日は「狼の口~ヴォルフスムント~」の話をしたいと思います。+

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ワタクシがこの漫画を知ったのは五年前ぐらいだと思いますが、あまりにコミックの刊行ペースが遅いため、途中まで読んで放置していました。具体的には四巻で読むのやめていたのだ。ここ2,3年は漫画を読む暇もないほど忙しかったのだ。しかしこないだ熱が出て寝込んでしまい、あまりに暇なので五巻、六巻と買って読んだ。

これはスイス建国の歴史モノとして楽しむことができるはずだし、いろいろな視点があると思うが、ピカレスクロマン(悪漢モノ)として楽しむのが正解でしょう。

ドイツ・オーストリアとイタリア・スイスを隔てる関所を管轄する悪代官ヴォルフラム様の暴虐ぶりを楽しむ漫画だ。どこがどう暴虐かと言われたら、際立っているのはほぼ人間ではないところ、ではないでしょうか?

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これは関所を避けようとした密入国者を雪山で待ち伏せるお代官様の登場シーンですけどね。吹雪とともに現れるこれは、、、いったい何なんだこれは。神か魔のような存在感である。かっこよすぎるだろう。読者と主人公たちを奈落の底に突き落とすこのド派手な演出にはゾクゾクさせられますね。人間の登場のしかたではないと思います。

とりあえずこの悪代官は変態で妖怪かつしかもサドなんですよね。それでいて異常に頭がキれるという役回り。その智略と謀略によりオーストリア公ハプスブルク家に弓引く反乱分子やスイス独立派をのきなみ地獄へ送るのが仕事。で死体はむごたらしく晒すのが仕事。で、反乱を諦めさせて秩序を維持するのが仕事です。

あ~。

こういう仕事をやってみたい。。。

というのは嘘ですが、関所破りはいかなる例外もなしに死刑に処し、死体は晒して見せしめとし、怪しいやつもとりあえず殺しておくのがお代官様のお仕事の哲学なわけなんですね。

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”狼の口”というタイトルは関所のことですが、お代官様の名前も「ヴォルフラム」だし、上の絵を見ていただいても、このお代官様が主人公なんですよ~と暗に示していると思うんですよね。。この極悪人が主人公なんですね、この漫画。

もちろんこれはスイス独立派の革命物語です。「戦艦ポチョムキン」のスイス版のような漫画ですよ。圧政と抑圧、忍耐と蜂起、革命と勝利を描いた漫画のはずです。でも官憲反動が主人公という悪意に満ちた物語なんですわ。困ったものですね。作者も性格がちょっと悪いのではないかと思いますが、だからこそ個性的な作風になったと思う。

お代官様が主人公だと思うしかないもうひとつの理由として、独立派の登場人物にそこまでキャラのたった人物がいないのが挙げられます。いや、いるんだが、お代官様がみんな殺してしまうのだよね。完璧な殺戮機構によって一切の例外も容赦もなくあっさりと。活躍する機会をわずかしか与えられずすぐに現世から退場していく英雄風の人々。その殺伐とした、命の重さなどどこにも感じられない荒涼とした世界観は実に素晴らしい。ドイツ人のキ×ガイぶりを補完する意味でもなかなか重要な作品だと思う。

だが、これは純国産の漫画でありますから、日本の漫画の影響が濃いです。特に挙げられるのは大昔の忍者漫画とかで有名な白戸三平先生だろう。中近世の封建社会を血も涙も排除して描いた圧政抑圧漫画「カムイ伝」が有名だ。残酷すぎる武家社会の恐怖を最下層の貧民の視点で描いた傑作ですな。ここでも体制側が反乱分子や無実の人々を虐殺する光景が吐くほど描かれている。特に白戸三平さんの漫画にはかわいいワンちゃんが全く出てこないんだよね。犬といえば基本的には子供を食い殺す生き物なんだよね。その点この”狼の口”でも無実の母子に10日ぐらいエサを与えていない狼をけしかけるシーンがありまして、超残酷ですはい。白戸三平さんの漫画でもよくこういうのみたなあ、、、

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けっこう拷問や処刑のバリエーションは豊富だけど、どこか既視感もあるんですよね。「北斗の拳」とか。元ネタを探すのも楽しいかもしれません。まあ根をたどれば歴史的に本当に行われていた処刑方法だったりするんでしょうけど、、

処刑される無辜の民の絶望の表情も嗜虐性を加速させます。冒頭の画像、いい表情でしょう?こんな顔されたらたまんないですよね。。イってしまいそうです。

というわけでお代官様とサディスティックな取り調べの世界を追体験したい方は是非どうぞ!革命物語としてもかなり秀逸なストーリーですよ。

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