炎628(Иди и смотри) 1985年ソ連

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※とある同人誌に何年か前に寄稿した記事です

1380459412_1380394593_16.jpg完全武装した軍隊が丸腰の女や子供や老人を皆殺しにする・・そんな卑劣でおぞましいことが本当に起こるのだろうか?そんなことが許されるのだろうか?しかしそんなことばかり起こったのが20世紀という時代だった。「炎628」は1985年のソ連映画だ。当時ソ連領だったベラルーシ=白ロシアにSDの特殊部隊「アインザッツグルッペン」が進駐し、現地協力者と共に戦争終了までに628の村々がそれら完全武装した特殊部隊によって住民もろとも焼き尽くされた。これは信じがたい話だが実話である。この部隊はナチスが領土を広げるたびに国防軍主力の後ろからついていき、ユダヤ人や共産党員、教師や弁護士、医者などの知的階級の抹殺を主任務としており、各占領地で反乱の火種をあらかじめ摘み取ることが目的だったようだ。しかし「ユダヤ人」の拡大解釈、私服で戦う武装ゲリラの存在により、無害な市民と無害な市民のふりをしているゲリラの区別が次第につかなくなり、文字通りの皆殺し作戦となっていったという。

1200513_1_3.jpgこの映画ではナチス・ドイツ占領下のベラルーシで戦いに憧れるとある少年兵が、家族を殺されゲリラに加わるが、ドイツ軍の攻撃を受けとある村へ落ち延びる。そこへアインザッツグルッペンが現れ、村の消滅劇を目の当たりにするという話だ。この映画は東欧作品特有の寒々しさ、説明の少なさなどがあるものの、ドイツ軍やヒトラーに対する丸出しの憎悪が大変美しい狂気を演出している。雄大で美しいロシアの森林に徐々に姿を現すナチス親衛隊の悪夢的存在感。アンドレイ・タルコフスキーの「僕の村は戦場だった」などでも既に確認されていることだが、美しい大自然と戦争がコラボすることで予想もつかない化学反応を起こし、極めて美しく禍々しい映画が出来上がるということがある。おどろおどろしく冷たく湿った緊張感がずっと続くのである。この映画では冒頭からドイツ空軍のフォッケウルフFw189偵察機が頻繁にエンジン音を響かせながらちょくちょく上空に現れ、常に主人公の少年はこの航空機の存在を身近に感じている。その邪悪な存在感は自分の国が外国の軍隊に占領されているということを暗示しているのだ。またこの手の映画ではドイツ軍の軍服に対する誤った考証が用いられるのは珍しくないことなのだが、軍服の考証にいたるまでかなり高い完成度を誇っている。ちゃんとドイツ人がドイツ語を喋っているのも嬉しい。おかげで極悪非道なドイツ軍の描写はリアルの一言。彼らが霧の中から音もなく現れるシークエンスは異常に緊迫感があり、恐怖すら感じる。アインザッツグルッペンは機械化戦闘部隊で中隊~大隊規模だった。ロシアの田舎道を何台ものトラックやバイクで移動する姿もこの映画では捉えられており、本当に驚嘆するほどリアルに描写できている。ロシアの雄大で美しい緑色の自然の中を、でかいエンジン音鳴らしながら移動する鉄の塊は、この映画の中ではただただ禍々しく映る。村中に展開し終えると村の住民をドイツへ移送すると銘打って一箇所に集め(アインザッツグルペンは住民をまとめて処刑する時しばしばこういう方法を使ったとされている)、教会の中へ力ずくで押し込める。その後は手榴弾、火炎瓶、火炎放射器によって生きたままバーベキューにしてしまう。彼らは心から殺戮を楽しみ、かつ情け容赦なく手際よくてきぱきと住民を抹殺していく。住民の悲鳴と絶叫が周囲を覆い尽くす中、軍楽をかき鳴らしげらげら笑いながら機銃掃射を加え、残った建物という建物全てを焼き払い、女は犯し、家畜は略奪し、楽しげに去っていく。とある親衛隊員がこう言い放つ。子供は未来そのもの、貴様ら下等人種に未来は与えられない。絶滅させてやると。こうして彼らは子供をこそことさらに虐殺のターゲットとし、実際その陰惨な毒牙にかけた。

1380459363_1380394611_1.jpgどうだろうか。貴方は絶対ドイツ軍のようなことしないと言い切れるだろうか?いかなる状況においても清廉潔白であることを自らに誓えるであろうか?自分以外の全員がやっていたらどうだろうか?自分だけやらないことを周囲から責められたら?軍法会議にかけて処刑するぞと脅されても?このアインザッツグルッペンの隊員の中にはロシア人や現地人もたくさんいた。ロシア軍に捕縛された際彼らはこう言って命乞いをした。「おれはドイツ人じゃない!強要されたんだ!ファシストの鬼どもに脅されて仕方なくやったんだ!」と。おそらく半分は本当であろう。しかし人間は他者の痛みを理解することは永遠にできない。他者の恐怖を「自分のことのように」感じることはできない。誰もが自分が思う以上に全く自分のことなど気にもとめてやしない。そういった「他者」の冷酷さに恐怖を感じたことはないだろうか?そしてあなた自身も他者の痛みを感じることは永遠にできない。人が人に暴力をふるうことは我々が想像するよりはるかに容易である。そして人間が、いや、人間の大群というものがいかに易々と弱いものへ暴力を振るうのか、強大な軍事力に標的にされた武器を持たぬ市民にとって抵抗することがいかに難しいのか、一見の価値がある。その被害を全面的に受けたロシア人の、ドイツ軍やヒトラーに対する怨念が画面全体から臭ってくる悪夢のような映画である。この映画は胃にずっしり重いものが残る最悪の後味の映画である。戦争映画を普段見慣れない人がいきなりこれをみるのはやめたほうが良いと忠告しておく。貴方はこの人間の本性に耐えられるか?

より詳しく画像などみたいかたはこちらへ(私の別のホームページです)

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