2009年の映画。ラースフォントリアーの鬱病復帰作。これはホラー映画であり、非常に残虐な描写が含まれている変態映画だが、この監督らしいアートチックな映画でもある。 |
ストーリーは、ある夫婦がセッ×スしてる最中に赤ちゃんが窓から転落して死亡する。 母親はショックを受け、セラピストの夫が妻を治そうと奮闘するという映画だ。日本人が好みそうな映画ではないですか(笑)。 日本人だったら悲しみの末前を向いて歩き出す、夫婦の愛が奇跡を起こしただとか、寝言のごときクソ映画に仕上げてしまうだろう。 だが、稀代のパンクマインズの持ち主であるラースフォントリアーだからね。そんな映画にはなっていないから安心して欲しい(笑)。セラピーの手法で曝露法というのがあるんだけど、恐怖のシチュエーションに実際にクライエントを曝露させて「ホラ、なんでもないでしょ(笑)」とやるアホのような方法がマジであるんだが、夫は嫁にそれをやろうとする。(でも確か最大限の恐怖にいきなり晒すのではなく、弱い恐怖から段階的に克服するようなモデルだったと思うから・・曝露法じゃないのかな)嫁が一番怖いと言ったのは「森」であった。夫は妻を連れてその森の中にある小屋を目指す。… 「森林は悪魔の教会よ」 奇しくも多くのブラックメタルバンドが森林をリスペクトし、CDのジャケットやアートワークに使用するモチーフが森林なのである。キリスト教により排斥された異教の神々が住まうのが鬱蒼と生い茂る欧州の森林である。森林はたくさんの神や精霊が住まう神聖な場所だ。彼らのペイガニズムは我が国の多神教信仰とよく似たものであると言えるだろう。 この妻はそういうことを言っているのだろうか? 悪魔の住まう邪悪な森林… それがどうやらラースフォントリアーの森林=自然=本質=natureに対する見方のようである。 本当にひねくれてますね…鬱病になるのも当たり前でしょう。物事の悪い面しか目に入らないという特徴が遺憾なく発揮されています(笑)。 ただ一方、「マイ・ファーザー 死の天使 アウシュヴィッツ収容所 人体実験医師」で元SS将校ヨーゼフ・メンゲレが 人間の内の闘争本能、性の衝動・・そしてわが子を死に至らしめた元凶がある部分からくると感じた妻は、夫のそこを叩き潰し、自分のそこを切り取ってしまう。 夫は自分の身を護るために最も悪魔的行為に手を染める。しかし生存するためにそれ以外どんな方法があったというだろう? 正にキリスト教的モラルに疑念を投げかけるアンチキリストなこの映画。 |